グリホサート(ラウンドアップ)
除草剤ラウンドアップで知られるグリホサート剤、慣行農業をやっていた頃はお世話になっていました、畑より屋敷周りを中心に散布していました。有機をはじめてからも使用していましたが、畑に農薬を使用していないのに身近な屋敷周りに農薬を使用するのが何かバランスが悪く思い、昨年は使用しませんでした。
いやー、除草剤のありがたみ身に染みてわかりました。草刈りが間に合わず、農機具庫周りが草ボーボーになってしまいました。ちょっとした廃墟感が出てきます。畑の草取りして、農機具庫の周りは草だらけ、このアンバランス、大丈夫かなと思っています。でも、畑に農薬を散布しないで、屋敷周りに農薬散布すると思うと、何か悔しいんです、売り物より自分を大事にしていない感じがして、お金に負けた気がして悔しいんです。
でも、、、今年はどうしようかな〜。
グリホサートって危険なの
自分の話はさて置き表題のグリホサート剤は、その昔は「土に触れると無毒化し、速やかに分解され、とても安全な農薬」として多くの農家の方は安心して使用していたと思います。
現在のラウンドアップのウエブサイトにも
ラウンドアップ除草剤の有効成分“グリホサート”はもっとも簡単なアミノ酸である“グリシン”と“リン酸”の誘導体です。ラウンドアップも同様の成分を含んでおり、普通物※1に分類されます。
ラウンドアップは野生生物・鳥類・昆虫類にも極めて安全性が高く、世界の環境保護区や、世界遺産の保全に、広く利用されています。
雑草の茎葉にかからずに土に落ちた成分は、処理後1時間以内のごく短時間で土の粒子に吸着し、その後微生物により自然物に分解。
約3~21日で半減、やがて消失します。
と安全性が紹介されています。(ニュアンスは少し変わったような気がしますが、)
なぜ、グリホサート剤がこんなに巷で危険と言われるのでしょうか?
自分は専門家ではないので、「安全」という人の話を聞けば、それほど危険ではない感じがするし、「危険」だという人の話を聞けばとっても危険な感じがします。知識って大事です、結局自分程度の知識だと世間の評価や自称専門家の人の意見に流されてしまします。
危険かどうか、リスクかどうかの判断をするだけの知識はありません。そこは専門家に任せます。
ここからはなぜグリホサートは危険と思われてしまうのか、調べ、考えてみます。
勝手な憶測や妄想に近いものが入っているのでお気をつけください。
グリホサートのイメージが悪い理由
理由1 モンサントが作っているから
(2018年にモンサントはバイエルに買収されています。)
ベトナム戦争で使用した枯葉剤(のちに集中散布された地域で奇形の出産が増加)を作った会社がモンサント。
過去にはPCB(ポリ塩化ビフェニル)の製造を手掛け、業績をあげています。のちにPCBは毒性が強く使用禁止になっていますが、最近でも廃棄処理の問題がニュースに取り上げられることがあります。
20世紀は公害の世紀とも言われてますが、化学薬品メーカーで開発当初便利で画期的な発明でも、のちに公害や環境汚染物質になってしまうことは少なくはないでしょう。
でもモンサントはこの頃まではそんなに企業イメージが悪かった訳ではないはずです。
そのモンサントが遺伝子組替え作物を販売した。
むしろ、この遺伝子組換え作物を作ったことで、過去のモンサントの歴史のなかに「枯葉剤」などを作った企業であることがあぶり出されて、よりイメージが降下していったのではないでしょうか?
理由2 ラウンドアップ・レディ
遺伝子組換え作物の名前が「ラウンドアップ・レディ」であること。
遺伝子組換え作物が違う除草剤の耐性を持つ作物だったら、グリホーサートがここまで叩かれていたかは甚だ疑問です。
ラウンドアップは少なくとも多くの農業関係者には、土壌に残留しない安全な農薬として理解されていたからです。
またウィキペディアによると、モンサントは
『研究費などでロックフェラー財団の援助を受けていた』
とあります。
陰謀論好きの人には、美味しい餌です。陰謀論の真意はわかりませんが憶測妄想好きの自分としても、『んっ!これは何かあるのでは?』と思ってしまいます。
理由3 残留基準値の引き上げ
2017年12月25日にグリホサートの残留基準値が改正されました。
小麦をはじめとした穀物を中心に大幅に引き上がっています。基準値が上がった食品の一部を抜粋して表にしてみました。(各自確認ください。写し間違いあるかもしれません。)
グリホサート(除草剤)
食品名 | 残留基準値 (改正後) ppm | 残留基準値 (改正前) ppm |
小麦 | 30 | 5.0 |
大麦 | 30 | 20 |
ライ麦 | 30 | 0.2 |
とうもろこし | 5 | 1.0 |
そば | 30 | 0.2 |
その他の穀類 | 30 | 20 |
大豆 | 20 | 20 |
小豆等 | 10 | 2.0 |
えんどう | 5 | 5.0 |
その他の豆類 | 5 | 2.0 |
てんさい | 15 | 0.2 |
ぶどう | 0,5 | 0.2 |
ひまわりの種子 | 40 | 0.1 |
ごまの種子 | 40 | 0.2 |
べにばなの種子 | 40 | 0.1 |
綿実 | 40 | 10 |
なたね | 30 | 10 |
その他のオイルシード | 40 | 0.1 |
過去にグリホサートが基準値を超えるようなことがあったのでしょうか。
厚生労働省のウエブサイトの「食品中の残留農薬等」の「食品中の残留農薬等検査結果」があったので調べてみました。
過去にグリホサートで基準値を超えたのは「小豆類」(カナダ製のいんげん豆)と「その他の豆類」(インド産ひよこ豆)とらっかせい(注 写し間違いがあるかもしれません。各自確認してください。)
小豆類 基準値2.0(改正後10) | ||
輸入品 | ||
平成20年度 (2008年度) | 検出数/検査数 | 79/82 |
検出範囲(ppm) | 0.07-4.7 | |
基準超過件数 | 34 | |
平成21年度 (2009年度) | 検出数/検査数 | 102/177 |
検出範囲(ppm) | 0.01-3.9 | |
基準超過件数 | 9 | |
平成22年度 (2010年度) | 検出数/検査数 | 43/117 |
検出範囲(ppm) | 0.01-2.7 | |
基準超過 | 3 | |
平成23年度 (2011年度) | 検出数/検査数 | 56/148 |
検出範囲(ppm) | 0.01-2.8 | |
基準超過件数 | 1 |
その他の豆類 基準値2.0(改正後5) | ||
輸入品 | ||
平成23年度 (2011年度) | 検出数/検査数 | 6/6 |
検出範囲(ppm) | 0.4-12 | |
基準超過件数 | 2 | |
平成24年度 (2012年度) | 検出数/検査数 | 6/16 |
検出範囲(ppm) | 0.16-6.3 | |
基準超過件数 | 1 | |
平成26年度 (2014年度) | 検出数/検査数 | 6/12 |
検出範囲(ppm) | 0.01-5 | |
基準超過件数 | 1 |
らっかせい 基準値0.1 | ||
輸入品 | ||
平成23年度 (2011年度) | 検出数/検査数 | 6/9 |
検出範囲(ppm) | 0.03-0.3 | |
基準超過件数 | 1 |
過去15年ほどでグリホサートの残留基準値違反は、この3種類の食品です。
基準値上げるのね
輸入の麦類からグリホサートが検出されたと話で聞くのですが、「食品中の残留農薬等検査結果」では違反もないですし、検出もされていません。
……………ん んっ んっ〜ー〜ー
すみません。検出されていないのではなく、麦類に対してグリホサートの検査自体を行なっていませんでした。
この時代に残留基準値を大幅に上げるというのは、気持ちの悪いものです。本当に安全だから上げたと祈るばかりです。
この改正に当たって、金品の授受のようなわかりやすいものでなくとも、法律違反ではなくても、利益供与と受け取られるようなこともない、ということも祈ります。
以上、「ラウンドアップ が危険と思われてしまう」大きくこの3つの理由だと考えます。「的外れ」、だったらすみません。
追記 農水省の残留検査
のちに検索してみると麦の残留検査、輸入前(船積時)に農林水産省で行なっていました。自分の無知さを恥るばかりです。
農林水産省のウエブサイト「米麦の残留農薬等の調査結果」の[3]輸入米麦の残留農薬等の分析結果をもとに表を作ってみました。
(分析の専門家ではありませんので読み解き方も間違っているかもしれません。データの取り込みミスもあるかもしれないので各自で確認してください。)
輸入小麦船積時検査 残留検査の分析結果
グリホサート(基準値29年まで5mg/kg、30年以降30mg/kg) 抜粋
(平成10年〜平成30年前期まで(平成11年、12年、15年データなし))
国名 | 検査点数 | 定量限界未満の点数 | 検出数 | 検出率 |
アメリカ | 2655 | 435 | 2220 | 83.6% |
カナダ | 1132 | 49 | 1083 | 95.7% |
オーストラリア | 876 | 567 | 309 | 35.3% |
フランス | 138 | 125 | 13 | 9.4% |
検出率はカナダ産、アメリカ産が多く、オーストラリア産、フランス産は低いですが、いづれも基準値内です。
検出濃度ですが平成24年前期までのデータですが(その後は検出したかどうかだけのデータになっています)最高値は平成24年前期のカナダ産4.34mg/kgとなっています。平成20年ごろから1.0mg/kg以上の検出濃度が出てきていました。しかし、検出した件数しか、わからないので全体に高いのかどうかはわかりません。
興味のある方は情報公開してもらってはどうでしょう。
よくわからないのは、基準値は超えてないとはいえ、これだけ高い検出率なのに、厚労省の「食品中の残留農薬等一日摂取量調査」に反映されていないのは何故なのでしょう。小麦使った食品は多いのだから取り入れるべきと感じますが、、、、?(この調査の自分の理解が足りないだけならいいのですが、、、)
残留基準値の引き上げですが
厚労省のウエブサイトにある
の51ページ以降に作物残留試験の一覧表に収穫前散布(プレハーベスト )思わせる試験の結果がありますが、それにしても2017年の改正前の基準値内におさまります。いったいどんな使い方を想定しているのでしょうか?
こういうこともあって「グリホサート 」危険説に説得力が増してしまう要因になるのではないでしょうか。
収穫直前農薬散布ってどうなの?
農業をついでから間もない頃、町内の先輩に
農薬散布作業に従事をしてはいけない、または近づけてはいけない順番として、
妊娠している方>子供>妊娠の(これから妊娠する人も含む)可能性のある方>若い男性>その他の方
と言われたことがあります。
特に胎児や成長過程の子供には感受性が強くどんな影響があるかはわからないから気をつけるに越したことはない、とのことでした。
実際農薬散布すると、農薬の被曝が多いのは消費者よりも散布従事者であると感じています。
不安を煽ることはあまりしたくないですが、グリホサート剤に限らず収穫直前散布は(基準値内とはいえ)残留する可能性は高いです。できれば、妊娠中の方、子供には避けたいという気持ちがあるのは理解できます。(あまり過敏になって、精神的にやられてしまうのでは意味がないので、ほどほどに)
小麦の場合、グリホサート剤に限っていうと外国産より国産の物の方がリスクが避けられます。(国内でも近い将来、収穫直前散布が認められれば別ですが、)
そういう意味では有機農産物もおすすめです。
大豆の場合、国内でもグリホサート剤(他剤もあります)の収穫直前散布も認められました。(全て行なっている訳ではありません。国産といえども残留している可能性があるという程度です。)
グリホサート剤の残留リスクを避けたい場合は、有機農産物がおすすめです。
しかし、有機農産物よりも 生産者、消費者がお互い信頼関係のあるものにはかないません。