雪腐大粒菌核病だよ…
今年は雪解けが早く、オーガニック秋まき小麦にとっては良い年かなと思っていましたが…
ガーーーーン!!
今年は例年以上に当農場では冬枯れが多いです。
周辺の慣行農家さんで冬枯れ症状が見られる圃場はありません。
肥料農薬の差だけなのでしょうか??
当農場の管理にも問題があるのかもしれません…
↑ちょっとわかりにくいですが、ネズミの糞のような菌核があります。
↑麦の芯はどうなっているのかと思い、開いてみると…
ネズミの糞のような菌核が びっしり
おそらく 雪腐大粒菌核病 です。
回復が見込めない株が多数…
う〜ん
圃場により症状にはムラがあります。
圃場の中でも症状にムラがあります。
品種間差
蒔いていない左側が きたほなみ 右側が キタノカオリ
写真では分かりにくいですが、きたほなみ の方が回復しています。
↑キタノカオリ
同じキタノカオリを畑の反対側から撮った写真です。
回復する株は緑に見えていますが、きたほなみ との差は、はっきりとわかります。
品種による 春の目覚めの早さの違いなら 良いのですけど…
↑こちらはアインコーン
エンマー小麦も同じような感じです。
回復している株を見つけることはできますが、全体が回復することは無さそう…
雪腐大粒菌核病 には 当農場で栽培している ブラックアインコーン 、ブラックエンマーは弱いようです。
普通小麦では当農場で栽培している きたほなみ と キタノカオリ では キタノカオリ の方が より 弱そうです。
前作の差
↑きたほなみ 前作は白クローバー
沢沿いの圃場、傾斜畑で南西斜面 陽当たりは良いです。
陽当たりが良いので、春のスタートも早いのかもしれません。
しかし、ムラがあり、すっかりハゲているところもあります。
↑きたほなみ 前作は大豆です。
(大豆間作小麦-大豆生育中の8月下旬から9月上旬に小麦の種を散播する栽培法)
クローバーや大豆後の秋まき小麦は ひまわり と えん麦 の緑肥跡に播種した小麦よりも回復は早いようです。
菌核(ネズミの糞のような)は見られます。
雪の影響
先ほどの前作がクローバの圃場のハゲた部分の きたほなみ です。
ハゲた部分の一部に 眩しい ぐらい冬枯れしていない状態の部分。
見てみると、鹿の食害があり、葉先ははっきり食べられた跡が…
他の畑でも鹿の食害があった場所は↓
近づいて見る↓と こちらも葉先が食べられ、鹿の糞も落ちていました。
積雪がある真冬に、鹿が雪を掘り返して緑々した小麦を食べていたのを見つけました。
この時は鹿は冬も酷いことするなー と思っていたのですが、今のこの状態を見ると 良いヒントをくれているのかもしれません。
大粒菌核を防ぐには、冬の間に鹿に葉先を食べられれば良い…まぁそんな技術を普及するわけはありませんけど・・・
↑キタノカオリ この日陰になる部分、屋敷林の影響なのですが、南側に屋敷林があるため生育も遅れ気味になったりあまり良い環境ではありません。
日陰の部分の融雪も遅く、作物には あまりよくありません。
しかし↓日陰の部分の雪が最後まで残っていたところは被害が少ないのです。
掘り返されて雪がない方が良いのか、残っていた方が良いのか、共通点はありませんが面白い結果です。
もしかすると、土壌凍結が関わっているのかもしれません。
・日陰は冬も気温が上がりにくい、
・鹿に掘り起こされた、
それぞれ土壌凍結が深く入ったのかもしれません。(憶測です)
↓キタノカオリ
こちらも被害が甚大なのですが、
一部筋になって緑々しいところが…
融雪時に溶けた水が 低みに沿って(矢印)流れたところではないかと思っています。
流れ(動き)のある水は被害軽減するのかもしれません。
長く滞水すると、病気の被害関係なく死んでしまいますけど。
↑キタノカオリ
こちらは筋になって細く緑のところが…
鹿道かなと思いましたが…
辿ってみると、古い暗渠排水の落口がありました。
(暗渠=透排水性の悪い畑の中に透水性のパイプを入れて畑の水を抜く施設)
水も出ていて、暗渠として機能はしているようですが…暗渠パイプの幅ぐらいしか被害を止められないようです。
もともと、乾燥地帯の作物である小麦。
冬の時期といえど、融雪時で雪の下で土が湿っている時間が長いと被害が増えるのかもしれません。
他の要因
↑きたほなみ
↑キタノカオリ
きたほなみ キタノカオリ の品種の間を空けています。
秋に小麦が出芽後しばらくしてから、この間を雑草処理のため浅く土を動かしています。
写真ではよくわかりませんが、両品種とも土の動かした隣の畝の被害が少ないです。
もしくは、早く目が覚めて生育が早いのかもしれません。
調べてみると
ネットで 雪腐大粒菌核病 を検索して見ると昭和40年代に調査した研究がヒットしました。
こちらの研究では
「発生の多少を決定する気象要因」 として
・積雪条件と関係が深く、地表面を0℃に保つに足る積雪が短いと発生が少ない。 「発生と肥培管理」として
・窒素の施肥量増量すると発病度は低下する(N30kgまでN30kg以上だと発病の減少は少ない)
ことが書かれています。
確かに今年の当農場の小麦にも当てはまるような…
・土壌凍結に関しては 鹿が雪を掘り返したところ や 日陰なった部分の土壌凍結が深く、地表面が氷点下なる時間が伸びて(0℃に保つ期間が少なくなり)被害が少なくなった可能性はありそうです。
・窒素に関しては、基本的に肥料は与えていないですが、クローバ跡や大豆跡が被害が多少ながらも軽減されているのはマメ科の窒素のおかげかもしれません。
また土を動かした隣の畝が比較的良いのは、土を動かすことにより有機物の分解が進み僅かながら窒素供給があった可能性がありです。
いずれも 憶測です。
またこちらでは
(引用)生態・伝染環について
雪腐大粒菌核病の病原菌はSclerotinia borealis(=Myriosclerotinia borealis)である。S. borealisは、生育適温が7~0℃程度とされ、-5℃であっても菌糸伸長が可能である典型的な好低温性糸状菌であるため、積雪下であっても活動することが出来る。宿主範囲はコムギやライムギのほか、チモシー、オーチャードグラスなど、主にイネ科作物全般である。伝染環としては、晩秋から初冬に菌核上に形成した子のう盤から子のう胞子が飛散する。小麦葉上に付着した子のう胞子は根雪後に発芽し、冬期間中に発芽した菌糸が凍害を受けた部位を門戸として侵入し、作物体上で蔓延する。蔓延後、養分を消費し尽くすと耐久体であるネズミ糞状の菌核が形成される。夏季の間は菌核の状態で休眠し、晩秋になると再び子のう盤が形成されて伝染源となる。一般的な畑作圃場では、春季に形成された菌核は耕起等の作業によって土壌中に埋没されるが、牧草地では耕起が行われないため、本菌の伝染環
として重要な位置づけにあるのではないかと考えられている。(以上引用)
当農場では埋没するような反転耕起を行なわず、イネ科のえん麦を緑肥に取り入れているのにも問題があるのかもしれません。
他にも検索して見ると
ありゃりゃー、こんないい研究していたのですね。
もっと早く気がつけば…
有機小麦栽培には、タイヤローラーが必須になるかもです。
ただちょっと心配なことが…数年前、近隣で小麦畑タイヤローラーで雪踏みをしていた農家さんがいたのですけど、土壌凍結が深く入ったのか、融雪時に滞水がひどかったのを覚えています。
それでも農薬に頼らない技術を研究してくれているのは、有機農業者として とてもありがたいことです。
知らないことばかり
それにしても、慣行でも麦作りをしていたのに知らないことばかり…
正直情けないですね…
でも、以前から研究され、病気の原因を知り、農薬が作られたりしています。
農薬ばかりだけではなく、耕種的にだったり、物理的だったりの研究が進めば良いですね。
まぁ、自分の人任せな部分は変わらないようです。